コンピュータグラフィックの世界 ~ クロス(Cloth)
衣服を始め、布に関する多くの表現を可能にするための技術。衣服を着たキャラクターの動きや風の影響による布の形状変化のシミュレーションを行ない、デザイナーが手付けで布のアニメーションをつける負担を軽減させる。最終的には、人間の皮膚を始め、あらゆる事象をシミュレーション可能にすることが目指されている。クロス(Cloth)の基本的な考え方としては、メッシュを擬似的なバネのようなものでリンクさせ、伸縮制限を持たせることによって、布の伸縮・弾性を再現させる。この質感再現のために、技術者によって様々な計算方法が提案されている。クロスシミュレーションが大々的に使用された最初の映画を挙げると、ネズミが主役のCG映画『スチュアート・リトル』がある。キャラクターにクロスの衣服を着せる制作手法としては、「擬似的な型紙を作り、結合し、キャラクターに被せる」といったMayaに実装されている手法と、Syflex(サイフレックス)のように「普通のモデリングと同様な衣服のモデリングをし、クロスに変換する」という2種類の方法に大別される。Syflexはスクウェアによる映画『ファイナルファンタジー』のプロジェクトでジェラール・バネル (Gerard Banel) が開発したクロスシミュレーションをさらに発展させたもの。非常に高速で安定しており、MAYAのように布同士が反発して暴れるようなおかしなシミュレーション結果を出すことは少ない。映画そのものは振るわなかったが、このプロジェクトで考案された制作管理の手法、開発された多くのプログラムの技術的貢献は非常に高く、このプロジェクトに関わっていた様々なプログラマー、デザイナーがあちこちの映画プロダクションに移り、現在のあらゆる映画のVFXを進歩させている。